2018年7月初めの週に起きた西日本豪雨の被害。
愛媛でも広島・岡山につづき3番目に亡くなった方が多いという大きな被害が出ました。
まずは亡くなられた方のご冥福を謹んでお祈り申し上げます。
今回、愛媛県宇和島市吉田町の被災地を車で回って気が付いたことがあります。
ニュースなどTVでは被害状況ばかりでどういう場所が崩れたかなどのことは報道されていないと感じましたので、今後の参考に少しでも役立ててもらおうと思い記事にしました。
私自身は災害の専門家でもなくただの一県民にすぎませんが、自身も異常な豪雨を経験し、素人でも明らかに同じ傾向に気づく部分がありましたので、ひとつのデータとして参考にしてください。
目次
1・土砂崩れの発生箇所に大きな偏りがあった
私はふだん宇和島市近辺で配達のドライバーをしています。
今回の豪雨のあとも被災地となった宇和島市吉田町に被災地用のポンプなどを配達して回っています。
そこで被災地を回りながらいろいろな被災現場を見ることとなりました。
そのなかで被災後初日から気が付いたことがあります。
1-1・土砂崩れの発生している場所の大部分が木の根が少ないところだった
西日本豪雨発生後一週間、被災地を回りましたが、土砂崩れの発生している場所のほとんどが斜面で木が生い茂っていないところでした。
具体的には、急な斜面のみかん畑です。
愛媛県はみなさんご存知のとおりみかんの一大産地です。
宇和島市吉田町もみかんの生産が盛んで、あらゆるところにみかん畑があります。
みかん畑は斜面を利用したところが多く、特に海岸端で海からの照り返しを利用して生産されているところが多いです。
その他、居住地区や山間部でも頂上付近まで開拓されたみかん畑が広がっています。
家の真裏にみかん畑を作られているところも多く、今回大きな被害を受けられたのがそのような場所でした。
※なぜみかん畑が土砂崩れに弱かったのか
森林は「緑のダム」といわれることがあります。
森林があるところは、腐葉土(ふようど=落ち葉が分解されることによってできる養分の多い土)などが積もって土壌が厚くなっているため、雨水や雪どけ水をスポンジのようにたくさんたくわえることができるからです。
森林に降った雨水はゆっくりと地面にしみこみ、地下水の通り道を通って、やがて川へと集まります。
一方、森林がなくなると、地表はかわいてかたくなり、雨は勢いよく地表を流れるようになって、土砂災害や洪水が起こりやすくなります。
このように、森林には土砂災害を少なくする効果があるため、木がなくなって地面がむき出しになった山には、木を植えて土砂災害を防ぐ工事も行われます。
しかし、それでは森林がある山は決してくずれないかというと、そうではありません。木は地面に根を張るので、木の根が杭(くい)のように地面の動きをおさえ、くずれを防ぐ力はあります。しかし、根の深さは深いものでも1メートルくらいですから、表層崩壊を防ぐ力はあっても、もっと深いところからくずれる深層崩壊には、ほとんど効果がないのです。
引用元=NPO法人土砂災害防止広報センターさま
このように、腐葉土が無く硬くなっている状態のうえに木の根が少ない状態のみかん畑は崩れを防ぐ力が少なかったと考えられます。
また、これから掲載してある画像を見てもらえば分かりますが、実際に表面のみを勢いよく土砂が滑り落ちています。
被災地を回る中で撮影した画像です。
※止まって撮影できなかった写真がほとんどなので不鮮明なものもあります。
人家の裏のみかん畑が崩れています。↓
少し拡大
違う場所でも裏のみかん畑が崩落↓
こちらも頂上付近まで作られているみかん畑が100m以上にわたって崩れています。↓
判りづらいのでどう流れているか矢印で表しました。↓
丸印のあたりから崩れています。
右側の矢印の部分を下から撮影したものです。
道路まで線を描くように到達しています。
こちらも頂上付近まで畑が↓
同じ場所を写した違う1枚で、右側にみかんの木がありこの崩れた場所もみかん畑であることが分かります↓
こちらは同じみかん畑でも傾斜が比較的ゆるいのに大きく崩れてしまっています。↓
どの写真を見てもみかん畑の被害は表面のみの表層崩壊だったことが分かりますね。
1-2・トンネルの前後が崩れているところが多かった
みかん畑の他に崩落の共通点が見られたのが、トンネルの上でした。
高速のトンネルで崩れているところは、私の通ったところを見る限り無かったのですが、
集落から集落へとつながる抜け道的な小さなトンネルで数多く崩落が見られました。↓
上の写真の場所の別角度↓
撮影は止まっておこなうと通行の邪魔になるため、走りながら撮影してますのでうまく撮れてないです。
他にもトンネル前後が崩れているところがありましたが、撮影できず断念しています。
1-2-1・トンネル上の崩落現場でもう一点気が付いたこと
トンネル上部の崩落があったところで気が付いたことがもう一つあったのですが、
二箇所のトンネルを出たところで道路わきのアスファルトに異変が見られました。
アスファルトがひび割れて三角に上に向かって盛り上がっていたのです。
水が吹き出して盛り上がったというよりは、脇の崖に押されて圧力で盛り上がったように感じました。
水が吹き出したのであればひび割れるだけでなくアスファルトが剥がれてしまうはずだからです。
長いところは10mにわたり崖に平行に沿うように亀裂が入り盛り上がっています。
写真で見れば一目瞭然なのですが、こちらも撮影が困難でしたので撮影できていません。
あくまで私個人の想像にすぎませんが、あまりの雨量にトンネルの脇も崩れる寸前まできていたのではないかと思います。
今後また台風などが来た場合、真っ先に崩れてしまう可能性があるのではないかと危惧します。
1-3・それ以外の崩落場所
あとの土砂崩れが発生していた場所は、
・以前から土砂崩れが発生していたであろうコンクリート擁壁(ようへき)などの施工箇所
道路横が崩落しています。↓
違う角度から上の写真の場所を撮影↓
こちらはまた違う場所。擁壁の上から土砂が↓
フェンスも意味がない状態↓
・斜面の竹林
これもところどころ見かけましたが撮影できませんでした。
※竹林は根自体は密に張るため安定しますが、深く根を張ることがないので土砂崩れには弱いという弱点があります。
それを裏付ける結果ですね。
ただ、撮影できたけど近づけなかったため、みかん畑か竹林か判断できない写真はあります。↓
見た感じでは深層崩壊によって竹林がそのまま落ちているように見えます。
※深層崩壊とは
山の表面をおおっている土壌(=土)の部分だけがくずれ落ちることを表層崩壊、土壌の下の、岩盤の部分までいっしょにくずれ落ちることを深層崩壊といいます。
引用元=NPO法人土砂災害防止広報センターさま
頂上から全て崩落してますね。
隣の畑もところどころ崩れているように見えます。
・雑木が生えているところでも斜面角度のきついところ
先ほど紹介した道路横の崩落地点ですが、雑木が生えているにもかかわらず崩落しています。
先ほどの写真の一部を拡大してみると、岩の上にのっていた土が滑り落ちている様子がうかがえます。↓
こちらも角度が急で崩れていました。↓
・土質が赤土のところ
こちらも撮影できませんでしたが、ところどころ低くて角度がゆるい場所でも崩れて赤い土が見えていました。
赤土も保水性が高いために水はけが悪く、土中に溜まった水が限度を超えると崩れるのですね。
2・同じ雨量またはそれ以上の雨量なのに崩れていないところが沢山あった
同じ地区なのに崩れていないところはまったく崩れていません。↓
河川の氾濫による浸水被害のみです。
斜面もゆるく雑木がしっかり生えていて根が張っている場所などでは崩れていませんね。
地盤もしっかりしているのではないでしょうか。
2-1・他の町では土砂崩れの起きた場所は被災地と比べて極端に少なかった
宇和島市近辺の町でも被災地と同じかそれ以上の雨量だったのに、回ったところを見る限り土砂崩れが起こっている場所を見かけませんでした。
私が住んでいる所も、生まれてから今までこれだけ長い日数の異常な雨量が降り続いたことは記憶にありません。
家の裏は雑木林で、いままでに崩れたという話は家族から聞いた事がないので地盤もしっかりしているのでしょうが、
今回の豪雨ではいつ崩れるだろうとビクビクしていました。
それくらい異常な降り方でした。
そこまで降ったのに町内も川の氾濫くらいでほとんど土砂崩れは発生していません。
氾濫時の映像です。町内ではこの下流3箇所で大規模な氾濫がありました。↓
隣の町の鬼北町近永でも72時間雨量で全国20位に入る豪雨を記録したのに、同町内では浸水も含めて大きな被害はほとんどありませんでした。
3・共通点は見受けられるがどこが危ないか予測するのは困難
この写真を見てもらっても分かるように同じ斜面にあっても崩れている面と崩れていない面があったり、
いちばん凹んでいて水が集まりそうなところではなくある程度平たい面が崩れていたりと、予測は非常に困難です。
今回亡くなった方も自分が被害にあうと思っていなかったから避難されなかったはずです。
または水が浸水してきて動けなくなっていたのかもしれません。
実際この写真の場所は浸水していた跡が残っていました。
右側のフェンスと左側のガードレールに痕跡が残っています。↓
自分の家は大丈夫と思わず、もしもを考えて早め早めに避難しましょう。
引用させていただいた土砂災害防止広報センターさんのサイトはこちら
3・まとめ
全ての地域を回ることは配達ルートや通行止めで出来なかったですし、土砂崩れの予測というのは難しいのでどこが必ず危ないということは言えないのですが、
少なくとも現地を回ってみて明らかに共通点は見受けられたので、この記事を参考にどういうところが崩れていたかを思い出して今後また豪雨や台風が来たときに少しでも役立ててください。
実際崩れていた場所まとめ
・みかん畑などの木の根のしっかり張っていない急斜面
・小さかったり古かったりするトンネルの上
(入り口横なども崩れる可能性あり)
・過去に崩れたもしくは予防として擁壁(ようへき)工事などがされていた場所
・雑木が生い茂っていて木の根がしっかり張っていても急な斜面
・斜面の竹林
・赤土の場所
できるだけ早く離れる、もしくは近寄らない、通らないようにしてください。
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