生活

西日本豪雨で被害がなかった人へ正常性バイアスで逃げ遅れないために


 

 

2018年7月の初めの週に起こった西日本豪雨災害

 

今回土砂崩れ現場を回って気が付いたことがあったのですが、それとは別に自身も豪雨を経験して肌で感じた部分がありました。

 

 

これって次に豪雨になったときにやばいんじゃないの? と。

 

 

懸念することが現実とならないようにこの記事を書きました。

 

 

 

目次

1・西日本豪雨を肌で感じて思った懸念

 

 

今回、豪雨が終わって危惧していることがあります。

 

数十年に一度の大災害の危険があると言われながら、一部を除き拍子抜けするくらいに被害がなく、

今後このような豪雨になってもあれだけ降っても大丈夫だったんだから、今回も大丈夫だ」とだれも避難せず、

それによって被害にあう方が増えるのではないかと思うのです。

 

 

 

1-1・正常性バイアスの心理がはたらき、避難しようとしなくなってしまう可能性がある

 

 

いわゆる「正常性バイアス」の心理が強くはたらき、逃げ遅れる人が増えるのではないかと危惧するわけです。

 

 

※正常性バイアスとはどのようなものか

正常性バイアス(せいじょうせいバイアス)とは、認知バイアスの一種。

社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと

自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる

人間の心は、予期せぬ出来事に対して、ある程度「鈍感」にできている

日々の生活の中で生じる予期せぬ変化や新しい事象に、心が過剰に反応して疲弊しないために必要なはたらきである程度の限界までは、正常の範囲として処理する心のメカニズムが備わっていると考えられる

古い防災の常識では、災害に直面した人々の多くは、たやすくパニックに陥ってしまうものと信じられており、災害に関する情報を群衆にありのまま伝えて避難を急かすようなことは、かえって避難や救助の妨げになると考えられてきた

ところが後世の研究では、実際にパニックが起こるのは希なケースであるとされ、むしろ災害に直面した人々がただちに避難行動を取ろうとしない原因の一つとして、正常性バイアスなどの心の作用が注目されている

引用=ウィキペディアさまより

 

具体的な例もご紹介します。

2014年の御嶽山噴火 御嶽山の噴火で登山者55人が噴石や噴煙に巻き込まれて死亡した。

死亡者の多くが噴火後も火口付近にとどまり噴火の様子を写真撮影していたことがわかっており、携帯電話を手に持ったままの死体や、噴火から4分後に撮影した記録が残るカメラもあった。

彼らが正常性バイアスの影響下にあり、「自分は大丈夫」と思っていた可能性が指摘されている

引用=ウィキペディアさまより

 

 

 

なぜ正常性バイアスの心理がはたらき、逃げない人が増えるのではないかと思ったのかというと、

当の私自身が、今回「この異常な雨だと、いつ家の裏山が崩れてもおかしくない」と思いながらも逃げることが無かったからです。

 

 

みなさんも、「今回も大丈夫」「うちは被害に遭うことはない」「自分だけは大丈夫」と思ったこと、あるのではないですか?

 

 

1-1-1・私自身はなぜ逃げようと思わなかったのか

 

 

 

そのとき考えていたことをあとで思い出してみましたが、

 

 

1・今まで家族から家の裏山が崩れたということを聞いた事が無い。

 =何十年も崩れたことがないのだから「今回も大丈夫だろう」

 

 

2・避難するといっても何を用意すればいいか分からないし、めんどくさい。

 =布団とか持っていくのか?食料や水も?風呂とかどうすんだ?

 他の人と過ごすのはちょっとなー。準備なんてしてないし「そのまま居よう」「大丈夫だろう」

 

 

3・避難するといってもどこに?防災無線があっても聴けていないし町内や川の様子がわからない

 =様子も分からないのにウロウロするよりはそのまま居たほうがいいんじゃないか?「大丈夫だろう、そのまま居よう」

 

 

4・ペットの猫がいるけど、連れて行っても猫が嫌がるし他の人の迷惑になるよな。

 =車に乗せただけで嫌がって鳴きまくるからなぁ。「大丈夫だ、崩れないだろう。そのまま居よう」

 

 

と、このようなことを考えて行動に移すことはありませんでした。

今回の雨の異常さを感じながらもです

 

 

 

1-2・今回の豪雨が凄かったからこそなおさら正常性バイアスが強くはたらくのではないか

 

 

 

私も住んでいるのが愛媛県で、今回の豪雨の異常さを肌で感じたひとりです。

 

住んでいるのは宇和島市の近く。

 

 

今回の豪雨で、72時間の降雨量が全国で20位となった鬼北町の隣になります。

ちなみに死者の数が多かった上位3県の広島県、岡山県、愛媛県のうち、記録されたところでは鬼北町が一番雨量が多かったです。

 

 

異常な量の雨と、異常なまでに長期間降り続いたこと、正直これまでに経験がありません

数十年に一度の大災害の危険と報道されたのもうなづけました。

 

しかし、豪雨が終わってみて、あれっ?と思ったことがありました。

 

 

 

1-2-1・異常なほどの雨量にもかかわらず被害が非常に少なかった

 

 

 

誤解のないように申し上げますが、県内でも宇和島市の吉田町や西予市の野村町、大洲市などは非常に大きな被害が出ました。

 

私が住む町も3つの地域で川が大幅に氾濫し、沢山の家屋が水に浸かりました。

被災後一週間がたった今もまだ復旧、かたづけ作業がおこなわれています。

 

 

ではなにが非常に少なかったかというと、土砂崩れです。

 

 

吉田町では土砂崩れでも大きな被害が出ましたが、雨量が近辺で一番多かった鬼北町では、浸水被害をふくめてほとんど被害が見られませんでした。

 

山間部でここはかなり崩れているのではないかと予測していた地域でも、車で回ってみるとほとんど崩れているところがなかったのです。

 

 

 

1-2-2・今回の雨の降り方にも危惧する要因がある

 

 

 

ここまで書いてきて、

異常な豪雨だったのに被害がなくてよかったじゃない、またこれだけの豪雨になることはマレだろうし、心配することないじゃない。

 

という意見もあるかと思います。

 

 

私も雨の降り方が気にならなければこの記事を書くこともありませんでした。

 

今回これだけの豪雨になりながら、土砂災害の被害が非常に少なかったのは、台風などのときのように強風が吹かなかったからなのではないかと思っているのです

 

確かに今回ものすごい降り方でしたが、風がほとんど吹いてないのです。

淡々と雨が降り続くだけ。

 

バラバラと雨音だけが激しく、風の音やそれによって木々の揺れるザーッという音、家が揺れる、など風に起因することがありませんでした。

 

 

台風のときや梅雨時期など、今までもっと雨量や降る期間が少ないときでも、ものすごい規模で土砂崩れが発生したことがあります。

植林された針葉樹の山が半分近く樹木ごと崩壊していました。

 

 

あくまで素人の意見にすぎませんが、土砂が崩れる要因のひとつとして風によって木々が揺れてそれが地面に伝わり刺激されて崩れやすくなるのではないかと。

 

 

今回、大規模な土砂崩れが発生したときよりもはるかに多い雨でも土砂崩れが見られなかったのは、風がなかったからなのではないかと思ったのです。

 

 

 

1-2-3・異常豪雨なのに土砂崩れが発生しなかったからこそ正常性バイアスが強くはたらく

 

 

 

ここで具体的な例を一件紹介します。

ハリケーン・カトリーナ2005年8月、アメリカのニューオリンズにハリケーン「カトリーナ」が直撃して街が水没、ハリケーンが来る前に避難命令が出ていて、80%の住民が避難していた。

避難しなかった20%は、車を持っていない貧困層だったと当初は報道されたが、危険減少・復旧センターの所長であるマイケル・リンデルによると、避難しなかった人たちは「逃げなくてもいい」という信念を持っていたという

避難しなかったのは主に老人で、過去にニューオリンズではハリケーン「ベッツィ」、「カミール」という「カトリーナ」に匹敵するハリケーンの来襲を受けていた歴史があった

これらのハリケーンでニューオリンズが暴風雨に耐えたことを老人たちは知っていたため、彼らは「今回も大丈夫」という信念を持ったとされる

引用=ウィキペディアさまより

 

 

人は正常性バイアスという心理作用によって普通でも「自分だけは大丈夫」「今回も大丈夫」と思ってしまうのです。

 

上記の例を見ても分かりますが、

「普通の台風や大雨で崩れたところがあるのに、数十年に一度のレベルの豪雨でも自分の家の裏山は崩れなかった」

そう思ったら、大規模な台風などが来ても「これくらい、前の豪雨のほうが凄かった。今回も大丈夫だ。」と思ってしまうと思いませんか?

 

私の仮説があっていて、台風の強風によって大丈夫と思っていた場所が崩れてしまったとしたら・・・。

これってすごく怖いことだと思いませんか。

 

 

 

2・正常性バイアスで命を落としてしまわないようにするために

 

 

普段から正常性バイアスの心理というのは非常に危険なんだと認識して、

 

台風や大雨などの災害が近づいているときには、

「自分は今そういう考え方をしていないか?実際よりも災害規模を過小評価していないか?」

と常に問いかけることが大事だと思います。

 

自分は安全と思いたくても、早めに非難しておくことが重要なのではないでしょうか。

 

 

また、私も体験しましたが、

 

・どこに逃げればいいか分からない

・なにを持っていけばいいかわからない

・避難経路の状況が分からない

 

など、実際に避難を考えたときに足かせとなってしまう事柄について、

 

・普段から避難所または非難できそうな場所を調べておくとか、

・避難するときに必要なものを前もって準備しておくとか、

・どのルートなら安全に移動できるか普段から調べておくとか、

 

意識して準備しておくのが必要なときにスムーズに避難できることにつながるのではないでしょうか。

 

 

 

3・まとめ

 

 

 

正常性バイアスは人間に備わっている心理機能として強力に作用してしまいます。

 

逃げなければ危険な状況においても、自分は大丈夫だ、平常と変わらないんだ、と危機を回避する行動を邪魔します。

 

 

正常性バイアスの特性を知っておけば、いま自分は危険な心理状態にある、と気づくことができ、修正することも可能なのではないでしょうか。

 

 

今回の西日本豪雨の状況が今後さらに被害を拡大させてしまう危険性があるのではないかと思い、筆をとりました。

 

この記事が少しでもみなさんの参考になれば幸いです。

 

こちらの記事もあわせてどうぞ。

西日本豪雨の愛媛県宇和島市の被災地を回って気が付いたこと

 


 


-生活

© 2024 やまざとオヤジの桃源郷